2024.10.30
cotonari通信 Vol.9(2024.10)
こんにちは!cotonari代表理事の佐藤槙子です。やっと秋らしくなってきましたね。10月に知立市で強度行動障害の予防や軽減のための研修があったので、私とスタッフ合計3人で参加してきました。今号のブログは、そこで学んだこと、感じたことを中心に書いていきます。
■「強度行動障害」ってなに?
皆さん、「強度行動障害」って知っていますか? 療育の現場でも時々登場する言葉です。強度行動障害とは、「自傷、他傷、こだわり、もの壊し、睡眠の乱れ、異食、多動など本人や周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態を意味する用語」です(研修講師の「あいち発達障害者支援センター 樋口麻美さんのレジュメより引用」。
自閉症との関連が深いことが分かっていて、強度行動障害の状態になっている人のおよそ2人に1人が自閉症です。ひとつポイントは、強度行動障害は、先天的に持って生まれるような脳の特徴などによるものではなく、周りの環境などによる二次的な障害だということです。幼少期からの関わり方が積み重なって、中高生の頃に発症する人が多いです。
さぁ、ざっとここまで知って、障害の発生を予防できたり、障害の度合いを軽減したりするために、どんなことができるか想像がつくでしょうか。
■「伝え方」を工夫して「未学習」「誤学習」を減らす
強度行動障害で自傷や他害に至ってしまう流れは、すごくシンプルに表すとこんな感じです。
①子どもは自分なりの表現で、欲求を表した
②それが相手にうまく伝わらなかった
③じたばたと暴れた
④すると欲求が受け入れられた
⑤暴れれば伝わると理解した
⑥暴れる。それでも受け入れられないときは、もっと暴れる…→ 強度行動障害
この流れの中にあるのが、「未学習(まだ学べていない状態)」「誤学習(誤って学んでしまった状態)」です。子どもの欲求の表し方と大人の受け止め方が、本来あるべき姿とは違う形で、子どもの中で結び付けられてしまいます。
大人側は、暴れている子どもを何とかしようと、無理な欲求を「とりあえず」受け入れたとします。子どもの側では「暴れたら聞いてもらえる」と感じます。それが積み重なって、他のあるべき「伝え方」を学ぶことができずに育つと、自傷や他害で示すようになってしまうのです。
「伝え方」という言葉は、2つの意味を含んでいます。子どもが欲求を伝える時の「伝え方」が大切である一方、大人側からの子どもへの「伝え方」にも工夫が必要です。言葉が難しければ、絵カードを使ったり、伝えるタイミングを考えたり、先日研修を行ったPECSの学びも活用できます。関わる人たちがこれらを丁寧にやっていくことが、強度行動障害の予防、軽減につながるということです。
■分かった気になって、思い込んではいけない
こうした研修に参加しながら、ひとつ思ったことがありました。それは「思い込んではいけない」ということです。普段から子どもたちの様子を見ていると、私たちもだんだんとその子の傾向が分かってきます。「この子にはこんな伝え方がいいな」「こういう遊びが好きだな」と分かるほどに、それが思い込みにつながるという危険性を考えないといけません。
例えば、言葉がある程度理解できるA君へは、普段は口頭でいろいろと伝えていました。でも、なかなか早く動けません。私たちは、言葉の理解はできているのだから、彼の切り替えの苦手さや頑固さが原因だろうと考えていました。ところがある日、ホワイトボードに書いて渡してみると、彼はおやつを食べながらも何度もそれに目をやり、結果としていつもより早く帰り支度ができました。これまで言葉は理解できても、頭に残らなかったんだなと思い当たった時、「言葉が分かる=口頭指示」と安易に結び付けてはいけないなと感じました。
おもちゃを渡しても投げてしまうB君。一時期パズルにハマったことはありましたが、最近はすぐに投げるので、創作系の遊びはしないだろうと思っていました。ところが友達がやっているのを見て、アイロンビーズに30分も集中! 本人も楽しそうでした。他にも、友達が黒板に字を書くのを見て、それまで関心が無かった子がチョークをもって線を書いたことも。この辺りは、集団療育ならではで、お友達のおかげで、子ども達の活動の幅を広げることができました。私たちの思い込みが、子どもたちへの支援の幅を狭めてしまわないよう、重々気をつけねばと思った出来事でした。
今回書いてきたように、強度行動障害の予防や軽減も含めて、子どもたち一人ずつにいかにしっかり向き合うか、よく考えるか、が、私たちの仕事にはとても大切です。それを意識しながら、今回の研修のように知識も補完して、事業に取り組んでいきたいと思います。
最後にお知らせです。子ども一人ずつをしっかり見て療育に取り組んでいきたい方、私たちと一緒に働きませんか! 現在、スタッフ増員のために新しく来てくださる方を募集しています。興味をもってくださった方は、いつでもcotonari代表理事の佐藤まで、ご連絡くださいね。
■「強度行動障害」ってなに?
皆さん、「強度行動障害」って知っていますか? 療育の現場でも時々登場する言葉です。強度行動障害とは、「自傷、他傷、こだわり、もの壊し、睡眠の乱れ、異食、多動など本人や周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態を意味する用語」です(研修講師の「あいち発達障害者支援センター 樋口麻美さんのレジュメより引用」。
自閉症との関連が深いことが分かっていて、強度行動障害の状態になっている人のおよそ2人に1人が自閉症です。ひとつポイントは、強度行動障害は、先天的に持って生まれるような脳の特徴などによるものではなく、周りの環境などによる二次的な障害だということです。幼少期からの関わり方が積み重なって、中高生の頃に発症する人が多いです。
さぁ、ざっとここまで知って、障害の発生を予防できたり、障害の度合いを軽減したりするために、どんなことができるか想像がつくでしょうか。
■「伝え方」を工夫して「未学習」「誤学習」を減らす
強度行動障害で自傷や他害に至ってしまう流れは、すごくシンプルに表すとこんな感じです。
①子どもは自分なりの表現で、欲求を表した
②それが相手にうまく伝わらなかった
③じたばたと暴れた
④すると欲求が受け入れられた
⑤暴れれば伝わると理解した
⑥暴れる。それでも受け入れられないときは、もっと暴れる…→ 強度行動障害
この流れの中にあるのが、「未学習(まだ学べていない状態)」「誤学習(誤って学んでしまった状態)」です。子どもの欲求の表し方と大人の受け止め方が、本来あるべき姿とは違う形で、子どもの中で結び付けられてしまいます。
大人側は、暴れている子どもを何とかしようと、無理な欲求を「とりあえず」受け入れたとします。子どもの側では「暴れたら聞いてもらえる」と感じます。それが積み重なって、他のあるべき「伝え方」を学ぶことができずに育つと、自傷や他害で示すようになってしまうのです。
「伝え方」という言葉は、2つの意味を含んでいます。子どもが欲求を伝える時の「伝え方」が大切である一方、大人側からの子どもへの「伝え方」にも工夫が必要です。言葉が難しければ、絵カードを使ったり、伝えるタイミングを考えたり、先日研修を行ったPECSの学びも活用できます。関わる人たちがこれらを丁寧にやっていくことが、強度行動障害の予防、軽減につながるということです。
■分かった気になって、思い込んではいけない
こうした研修に参加しながら、ひとつ思ったことがありました。それは「思い込んではいけない」ということです。普段から子どもたちの様子を見ていると、私たちもだんだんとその子の傾向が分かってきます。「この子にはこんな伝え方がいいな」「こういう遊びが好きだな」と分かるほどに、それが思い込みにつながるという危険性を考えないといけません。
例えば、言葉がある程度理解できるA君へは、普段は口頭でいろいろと伝えていました。でも、なかなか早く動けません。私たちは、言葉の理解はできているのだから、彼の切り替えの苦手さや頑固さが原因だろうと考えていました。ところがある日、ホワイトボードに書いて渡してみると、彼はおやつを食べながらも何度もそれに目をやり、結果としていつもより早く帰り支度ができました。これまで言葉は理解できても、頭に残らなかったんだなと思い当たった時、「言葉が分かる=口頭指示」と安易に結び付けてはいけないなと感じました。
おもちゃを渡しても投げてしまうB君。一時期パズルにハマったことはありましたが、最近はすぐに投げるので、創作系の遊びはしないだろうと思っていました。ところが友達がやっているのを見て、アイロンビーズに30分も集中! 本人も楽しそうでした。他にも、友達が黒板に字を書くのを見て、それまで関心が無かった子がチョークをもって線を書いたことも。この辺りは、集団療育ならではで、お友達のおかげで、子ども達の活動の幅を広げることができました。私たちの思い込みが、子どもたちへの支援の幅を狭めてしまわないよう、重々気をつけねばと思った出来事でした。
今回書いてきたように、強度行動障害の予防や軽減も含めて、子どもたち一人ずつにいかにしっかり向き合うか、よく考えるか、が、私たちの仕事にはとても大切です。それを意識しながら、今回の研修のように知識も補完して、事業に取り組んでいきたいと思います。
最後にお知らせです。子ども一人ずつをしっかり見て療育に取り組んでいきたい方、私たちと一緒に働きませんか! 現在、スタッフ増員のために新しく来てくださる方を募集しています。興味をもってくださった方は、いつでもcotonari代表理事の佐藤まで、ご連絡くださいね。