2024.12.31
cotonari通信 Vol.10(2024.12)
こんにちは!cotonari代表理事の佐藤槙子です。あっという間に2024年も年末ですね。今年最後のブログでは、先日行ってきた研修と、1年間の活動を振り返ります。
■外国籍×発達障がいの困りごとって?
「外国人の子どもと発達障がい」をテーマに講演のご依頼をいただき、茨城県つくば市のJICAつくば(ジャイカ/独立行政法人国際協力機構)へ。茨城NPOセンターコモンズさんがJICAの委託を受けて行う「多文化ソーシャルワーク講座」の中の1講座として、多文化共生や福祉事業に関わる支援者さんたちに向けて、お話させていただきました。
cocoroneでは、外国籍の発達障がい児も受け入れて療育をしています。「ポルトガル語を話せるスタッフがいて状況に応じてポルトガル語でも対応している」「多言語での案内を貼っている」など、日々の療育でも様々な工夫をしています。
そうした支援の中で私自身が実施していることや感じていることを、実際にあった事例とともにお話しました。支援者の方に意識してほしいなと思うことの1つは「情報伝達が十分にできているかを、対日本人以上に気に掛けること」です。
インターネットでたくさんの情報が手に入りますが、障がい自体については全世界にあるものなので、自国の言葉でも調べられます。一方「日本の福祉制度」「日本の教育制度」など、日本で定められている制度については、日本語での情報しかないことが多く、日本語が堪能でなければうまく探せません。
この「探せない」に加え、「思いつかない」という壁もあります。この地域に住んでいる外国籍の方々の母国と日本を比べると、福祉の面においては日本の方が細やかで充実していることも多いのですが、「こうした制度があるのではないか」と頭に浮かばなければ調べようがありません。親御さんが出身国の制度しか知らなければ、思いつかないままになってしまう。そこも含めて支援者の側でフォローすることが必要だと感じています。
ここを解消するために使えるものも、具体的に紹介しました。ここでもいくつか紹介しておきますね。
【発達障害に関する外国人保護者向けパンフレット】(発達障害情報・支援センター)
http://www.rehab.go.jp/ddis/world/brochure/
【特別支援学校リーフレット】(茨城NPOセンターコモンズ)
https://x.gd/juOZu
【子どもの発達・発育が気になる親のためのライフコースマップ~外国籍の保護者の方へ~】 (NPO法人多文化共生リソースセンター東海)
https://note.com/mrct/n/nc12591be50c9
【こんなときどうしたらいい? 外国にルーツを持つ子どもの日本語支援・発達支援に関する65の質問に専門家が答える!たんけんたいシリーズ Q&A集】 (川崎直子)
https://drive.google.com/file/d/1yHzh-k_AXURLyoCD9Y9vc68tA4F4U9jv/view
また、委託者であるJICAでは、各国の教育制度についての情報をまとめています。こちらを見ると、障がい児教育も含めて各国の教育事情が分かるので、学校の先生なども対応しやすいですね。
https://www.jica.go.jp/domestic/yokohama/information/topics/2023/1516021_14656.html
豊田市福祉事業団の理事長である髙橋脩さんは、「日本で暮らす「外国にルーツをもつ障害のある子ども」と家族は二つのバリア・困難性に直面する。 ① 障害ゆえのバリア・困難性 ② 異文化の中で育ち暮らすことによるバリア・困難性」と書いています。(髙橋脩「外国にルーツをもつ障害のある子ども」の支援について. そだちの科学. 2018. no31, p99-102.より引用)。日本人よりもひとつ壁が多い外国籍の子たちが健やかに過ごせるように、私たちもできることをしていきたいですね。
■「多文化保育園」を見学、心動かされた瞬間
研修会の翌日は、研修会の主催をされた「茨城NPOセンターコモンズ」さん(常総市)へ見学にお邪魔しました。シェアハウスや就労支援A型事業所の運営、子ども学習支援、就学支援などを行っている認定NPO法人です。その中でも多文化保育園「はじめのいっぽ保育園」の見学が、心に残りました。
3~5歳児がいる、6人程度の少人数クラスにお邪魔しました。発達障がいの子も2人いて、一緒のお部屋で遊んでいます。お部屋に入ると、ひとりの女の子が「これに座って」と、私に椅子を持ってきてくれました。机上でプリントに取り組む時間が始まります。多くの子が椅子に座って描き始める中、発達障がいの子たちは床でごろんとしたり、教室内を走り回ったりしていました。皆それを特に気にすることはありません。
少し経って、1人が自分の席にやって来ました。ところが何か腑に落ちない様子でまた走り始めます。その時、さっきの女の子が私のところに来て言ったのです。「ごめんね、〇〇君、この椅子が好きだから、替わってくれる?」。そう、私が座っていた椅子は、普段彼が使っている椅子だったんですよね。女の子が椅子を戻すと彼はもう一度やってきて、今度は座ってプリントに描き始めました。そのうち、もう一人の子も来て、2人とも、周りの子たちが描く姿を真似して描いてみる、という様子でした。
私がいいなと思ったことが2つあります。1つは、教室にいる先生や子どもたちが、障がいのあるなしで隔てた見方をしていないこと。「好きだから」、この椅子譲ってくれない?なんて、気持ち良い言葉ですよね。もう1つは、同じ場にいることで、発達障がいの子たちが、定型発達の子の影響を自然に受けながら成長していけるということ。
人員配置のこともあり、実際の保育現場ではなかなか難しい点もあります。それでもこの様子を見ながら、いつか自分もこんな保育園がやりたいなと、心をあったかくして帰ってきたのでした。
■地域の子育て環境づくりも頑張っていきます
さて、2024年を振り返ってみると、療育でcocoroneやcohakuに通ってくる子だけでなく、地域の子育てのためにも動けた1年だったなと感じます。日頃から取り組んでいるni-cori・abericoの活動に加え、cohakuでは7月から「くまのみぱーく」という催しを始めました。
「くまのみぱーく」は、障がいのあるなしに関わらず、この地域で子育てをする方々の役に立てばと始めた、学びと遊びのイベント。0歳児~未就園の子と保護者に向けて月に1度開催し、子どもの発達に関わるお話をした後で、一緒に遊びます。cotonariの理学療法士や公認心理師が専門的な視点から話をしているので、私自身も勉強になっています。来年も続けていきますので、親子で気軽に参加してくださいね。開催案内はcohakuのInstagramで行っています。
このブログも今回で10号を迎えました。隔月でブログと手描きのお便りを発行していますが、お便りも11月で10号になりました。それぞれ10回ずつ出してきたことで、cotonariの活動を地域の方々に知っていただく機会として定着してきたかな?と嬉しく思っています。お便りを受け取ってくださったり、療育で使うおもちゃを募集した時には、すぐに持ってきてくださったりと、皆さんありがとうございました! 感謝の気持ちでいっぱいです。来年も続けていきたいと思いますので、読んでいただけたら嬉しいです。感想も聞かせてくださいね♪
それでは、2025年が、地域の子どもたちにとって幸せな年になりますように。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
■外国籍×発達障がいの困りごとって?
「外国人の子どもと発達障がい」をテーマに講演のご依頼をいただき、茨城県つくば市のJICAつくば(ジャイカ/独立行政法人国際協力機構)へ。茨城NPOセンターコモンズさんがJICAの委託を受けて行う「多文化ソーシャルワーク講座」の中の1講座として、多文化共生や福祉事業に関わる支援者さんたちに向けて、お話させていただきました。
cocoroneでは、外国籍の発達障がい児も受け入れて療育をしています。「ポルトガル語を話せるスタッフがいて状況に応じてポルトガル語でも対応している」「多言語での案内を貼っている」など、日々の療育でも様々な工夫をしています。
そうした支援の中で私自身が実施していることや感じていることを、実際にあった事例とともにお話しました。支援者の方に意識してほしいなと思うことの1つは「情報伝達が十分にできているかを、対日本人以上に気に掛けること」です。
インターネットでたくさんの情報が手に入りますが、障がい自体については全世界にあるものなので、自国の言葉でも調べられます。一方「日本の福祉制度」「日本の教育制度」など、日本で定められている制度については、日本語での情報しかないことが多く、日本語が堪能でなければうまく探せません。
この「探せない」に加え、「思いつかない」という壁もあります。この地域に住んでいる外国籍の方々の母国と日本を比べると、福祉の面においては日本の方が細やかで充実していることも多いのですが、「こうした制度があるのではないか」と頭に浮かばなければ調べようがありません。親御さんが出身国の制度しか知らなければ、思いつかないままになってしまう。そこも含めて支援者の側でフォローすることが必要だと感じています。
ここを解消するために使えるものも、具体的に紹介しました。ここでもいくつか紹介しておきますね。
【発達障害に関する外国人保護者向けパンフレット】(発達障害情報・支援センター)
http://www.rehab.go.jp/ddis/world/brochure/
【特別支援学校リーフレット】(茨城NPOセンターコモンズ)
https://x.gd/juOZu
【子どもの発達・発育が気になる親のためのライフコースマップ~外国籍の保護者の方へ~】 (NPO法人多文化共生リソースセンター東海)
https://note.com/mrct/n/nc12591be50c9
【こんなときどうしたらいい? 外国にルーツを持つ子どもの日本語支援・発達支援に関する65の質問に専門家が答える!たんけんたいシリーズ Q&A集】 (川崎直子)
https://drive.google.com/file/d/1yHzh-k_AXURLyoCD9Y9vc68tA4F4U9jv/view
また、委託者であるJICAでは、各国の教育制度についての情報をまとめています。こちらを見ると、障がい児教育も含めて各国の教育事情が分かるので、学校の先生なども対応しやすいですね。
https://www.jica.go.jp/domestic/yokohama/information/topics/2023/1516021_14656.html
豊田市福祉事業団の理事長である髙橋脩さんは、「日本で暮らす「外国にルーツをもつ障害のある子ども」と家族は二つのバリア・困難性に直面する。 ① 障害ゆえのバリア・困難性 ② 異文化の中で育ち暮らすことによるバリア・困難性」と書いています。(髙橋脩「外国にルーツをもつ障害のある子ども」の支援について. そだちの科学. 2018. no31, p99-102.より引用)。日本人よりもひとつ壁が多い外国籍の子たちが健やかに過ごせるように、私たちもできることをしていきたいですね。
■「多文化保育園」を見学、心動かされた瞬間
研修会の翌日は、研修会の主催をされた「茨城NPOセンターコモンズ」さん(常総市)へ見学にお邪魔しました。シェアハウスや就労支援A型事業所の運営、子ども学習支援、就学支援などを行っている認定NPO法人です。その中でも多文化保育園「はじめのいっぽ保育園」の見学が、心に残りました。
3~5歳児がいる、6人程度の少人数クラスにお邪魔しました。発達障がいの子も2人いて、一緒のお部屋で遊んでいます。お部屋に入ると、ひとりの女の子が「これに座って」と、私に椅子を持ってきてくれました。机上でプリントに取り組む時間が始まります。多くの子が椅子に座って描き始める中、発達障がいの子たちは床でごろんとしたり、教室内を走り回ったりしていました。皆それを特に気にすることはありません。
少し経って、1人が自分の席にやって来ました。ところが何か腑に落ちない様子でまた走り始めます。その時、さっきの女の子が私のところに来て言ったのです。「ごめんね、〇〇君、この椅子が好きだから、替わってくれる?」。そう、私が座っていた椅子は、普段彼が使っている椅子だったんですよね。女の子が椅子を戻すと彼はもう一度やってきて、今度は座ってプリントに描き始めました。そのうち、もう一人の子も来て、2人とも、周りの子たちが描く姿を真似して描いてみる、という様子でした。
私がいいなと思ったことが2つあります。1つは、教室にいる先生や子どもたちが、障がいのあるなしで隔てた見方をしていないこと。「好きだから」、この椅子譲ってくれない?なんて、気持ち良い言葉ですよね。もう1つは、同じ場にいることで、発達障がいの子たちが、定型発達の子の影響を自然に受けながら成長していけるということ。
人員配置のこともあり、実際の保育現場ではなかなか難しい点もあります。それでもこの様子を見ながら、いつか自分もこんな保育園がやりたいなと、心をあったかくして帰ってきたのでした。
■地域の子育て環境づくりも頑張っていきます
さて、2024年を振り返ってみると、療育でcocoroneやcohakuに通ってくる子だけでなく、地域の子育てのためにも動けた1年だったなと感じます。日頃から取り組んでいるni-cori・abericoの活動に加え、cohakuでは7月から「くまのみぱーく」という催しを始めました。
「くまのみぱーく」は、障がいのあるなしに関わらず、この地域で子育てをする方々の役に立てばと始めた、学びと遊びのイベント。0歳児~未就園の子と保護者に向けて月に1度開催し、子どもの発達に関わるお話をした後で、一緒に遊びます。cotonariの理学療法士や公認心理師が専門的な視点から話をしているので、私自身も勉強になっています。来年も続けていきますので、親子で気軽に参加してくださいね。開催案内はcohakuのInstagramで行っています。
このブログも今回で10号を迎えました。隔月でブログと手描きのお便りを発行していますが、お便りも11月で10号になりました。それぞれ10回ずつ出してきたことで、cotonariの活動を地域の方々に知っていただく機会として定着してきたかな?と嬉しく思っています。お便りを受け取ってくださったり、療育で使うおもちゃを募集した時には、すぐに持ってきてくださったりと、皆さんありがとうございました! 感謝の気持ちでいっぱいです。来年も続けていきたいと思いますので、読んでいただけたら嬉しいです。感想も聞かせてくださいね♪
それでは、2025年が、地域の子どもたちにとって幸せな年になりますように。来年もどうぞよろしくお願いいたします。