2023.04.28
cotonari通信 Vol.1(2023.04)
■お久しぶりです
こんにちは。cotonariブログをご覧いただき、ありがとうございます。代表理事の佐藤槙子です。
cotonariの新しいホームぺージを開設してから、ブログの更新がなかなかできていませんでしたが、その間もcotonariの中では、嬉しかったこと、困っちゃったこと、一緒に悩んだこと、笑ってしまったこと…、皆さんにも伝えたいことがいっぱいでした。
4月は新しく何かを始めるのにふさわしい月!ということで、今月からブログでcotonariの日常を少しずつ書いていきたいと思います。特に、0~18歳の発達障がい児の療育をしている「cocorone(こころね)」での子どもたちの様子を皆さんにも知っていただけたらいいなと思い、それを中心に書いていきます。
今、「発達障がい」という言葉は世の中にかなり浸透し、暮らしの中や、お子さんの通う学校・幼稚園・保育園などでもよく聞くようになったのではないでしょうか。それでも、一人ひとり特徴も違いますし、彼らが何に困り、親御さんがどんなことに悩んでいらっしゃるのか、そしてどう接するとより良いのかは、まだまだ知られていないのではないでしょうか。療育現場にいる私たちも、子どもたちの様子から多くを学んでいる日々です。
子どもたちは、地域の中で育っていきます。いろんな人と関わる時に、少し何かを知っておいていただくだけで、またcocoroneが普段どんな活動をしているのかを知っていていただくだけで、本人も、周りの方も、少しだけスムーズに動きやすくなったらいいな、それが子どもたちの生きるワクワクにつながったらいいなと思い、ブログを書いていきます。感想など、ぜひ聞かせていただけたら嬉しいです。ではさっそく、子どもたちとのお話を…。
■手が足らない時にこそ、思わぬ成長がある
支援学校に通う小学生のA君は、2歳ごろからcocoroneに来てくれています。手のひらの感覚が過敏なうえに手の細かな動きが難しいので、「目的のために手を使って物を動かす」ということがずっとできないでいました。穴に入れてもらうためにボールを渡してもすぐ手放してしまう、工作でのりを渡してもポイッとしてしまう、そんなことが続いていました。
3歳半ごろになったある日のことです。cocoroneでは普段、子ども1人に対してスタッフが1人つくことが多いのですが、その日はたまたま1人のスタッフが2人をみていました。スタッフと一緒に、紙コップの上に、のりのついた飾りを置いていく作業をします。A君と一緒にいたもう一人の子に少し時間がかかり、その間A君は待っていないといけませんでした。すると…なんと、自分で紙を手にとって、紙コップのところまで持っていき、上に置いたのです。「物を運ぶために手を使う」ということが、初めてできた瞬間でした!
実は、療育の現場の中で、こういった形で子どもが急成長することがあります。スタッフが「ほかの事に手を取られて、すぐに対応できない」=「その子が待たないといけない」という「いつもとは違う状況」が生まれた時。スタッフや親御さんができないだろうと思っていたことを、目の前でやってのける姿に出会うことが、ままあるのです。
私たちは、自戒しないといけません。「手を出しすぎていないか」「手を出すことで、子どもの成長の機会を奪ってはいないか」と。寄りそうことはとても大切です。でも、子どもが何かやろうとしている様子が見て取れたら、一歩引いて待ってみると、思わぬ成長が待っているかもしれません。
A君は先日、今度は初めてチョークで黒板に線を描く姿を見せてくれました。これまではお友達が黒板に絵を描いていても、楽しそうに見ているだけでした。ところが先日は、黒板の前にお友達と3人並び…。絵を描く友達に挟まれた真ん中のA君、うずうずしている様子だったので、チョークを渡してみました。
すると線を引いたのです! そのあとは、黒板消しを渡すと、消すこともできました。黒板消しを初めて使ったので、最初はどちらが消す側かも分からずでしたが、できるようになりました。いろんなお友達と一緒に過ごすことが本人の成長にもたらす影響も、大きいものがあります。cocoroneは、そうした役割としても大切な場所だなと思っています。
■6月まではゆったりと構えて
3月に入り、cocoroneはなんだか落ち着かない日々が続いていました。特別何かがあったわけではないのですが、子どもたちは皆そわそわ。ご飯も十分食べない子が増え…。それが4月も中旬を過ぎると、あらら?きれいにすーっとそわそわの風はどこかへ飛んでいき、普段の様子が戻ってきました。
3月の落ち着かなさは、何だったのでしょう?そう、年度の区切りを迎えることが原因だったのです。日本の教育機関は、4月~3月が1年なので、4月に始まり3月でひと区切りです。「学年がひとつ上がる」「保育園児から小学生になる」「担任の先生はどんな人だろう?」…そんな不安が、子どもたちの行動に現れていたのです。
発達障がい児はよく、「周りの人への関心が薄い」とか「空気を読まない」と言われることがあります。でも実は敏感に、空気を感じ取っているんです。誰の?そう、自分に一番身近なお母さんやお父さんの! 親御さんが不安になったり、落ち着かなかったりしているときは、子どもたちもそれを映す鏡のようになることがあります。だから、年度が始まって親御さんが落ち着くと、本人も安心する、そんな流れが3月~4月ごろは毎年あります。
cocoroneも4月中旬を過ぎて、全体的に落ち着いては来ましたが、まだ新1年生さんたちはかなり頑張っています。しかもこの先にはゴールデンウイークが控えています。4月の間に新生活の形がちょっと整ってきたなと感じても、長期連休を挟むことでまた0に近いところまで戻ってしまうこともしばしばです。
私としては「日常が戻るのは6月ぐらい」と、ゆったり構えていただければなと思っています。cocoroneでは、4月~5月は、いつもより子どもの様子に目を配り、歩調を合わせてあげたいと考えています。緊張も高まっていて疲れやすいので、できるだけ「落ち着く。安心できる」という環境を用意してあげたいです。
子どもたちが普段は言わないようなリクエストも、周りに迷惑でなければ聞いてあげてください。cocoroneでも、「自分の座りたい席に座る」など、子どもたちのささいな希望を聞いています。cocoroneが用意した段ボールをサンドバックのようにたくさんパンチしてから家に帰る子は、家ではスッキリした顔をしているそうですよ。
新しい環境に早く慣れて欲しいと思ってしまいがちな4月、5月。心が不安定になっている子どもたちは、普段できていたことができなくなったりもするので、さらに焦ってしまいがちです。でもそれは一時的なもの。落ち着けばまた出来るようになります。できるだけゆったりと構えて、気持ちよい季節を一緒に楽しみましょう。
こんにちは。cotonariブログをご覧いただき、ありがとうございます。代表理事の佐藤槙子です。
cotonariの新しいホームぺージを開設してから、ブログの更新がなかなかできていませんでしたが、その間もcotonariの中では、嬉しかったこと、困っちゃったこと、一緒に悩んだこと、笑ってしまったこと…、皆さんにも伝えたいことがいっぱいでした。
4月は新しく何かを始めるのにふさわしい月!ということで、今月からブログでcotonariの日常を少しずつ書いていきたいと思います。特に、0~18歳の発達障がい児の療育をしている「cocorone(こころね)」での子どもたちの様子を皆さんにも知っていただけたらいいなと思い、それを中心に書いていきます。
今、「発達障がい」という言葉は世の中にかなり浸透し、暮らしの中や、お子さんの通う学校・幼稚園・保育園などでもよく聞くようになったのではないでしょうか。それでも、一人ひとり特徴も違いますし、彼らが何に困り、親御さんがどんなことに悩んでいらっしゃるのか、そしてどう接するとより良いのかは、まだまだ知られていないのではないでしょうか。療育現場にいる私たちも、子どもたちの様子から多くを学んでいる日々です。
子どもたちは、地域の中で育っていきます。いろんな人と関わる時に、少し何かを知っておいていただくだけで、またcocoroneが普段どんな活動をしているのかを知っていていただくだけで、本人も、周りの方も、少しだけスムーズに動きやすくなったらいいな、それが子どもたちの生きるワクワクにつながったらいいなと思い、ブログを書いていきます。感想など、ぜひ聞かせていただけたら嬉しいです。ではさっそく、子どもたちとのお話を…。
■手が足らない時にこそ、思わぬ成長がある
支援学校に通う小学生のA君は、2歳ごろからcocoroneに来てくれています。手のひらの感覚が過敏なうえに手の細かな動きが難しいので、「目的のために手を使って物を動かす」ということがずっとできないでいました。穴に入れてもらうためにボールを渡してもすぐ手放してしまう、工作でのりを渡してもポイッとしてしまう、そんなことが続いていました。
3歳半ごろになったある日のことです。cocoroneでは普段、子ども1人に対してスタッフが1人つくことが多いのですが、その日はたまたま1人のスタッフが2人をみていました。スタッフと一緒に、紙コップの上に、のりのついた飾りを置いていく作業をします。A君と一緒にいたもう一人の子に少し時間がかかり、その間A君は待っていないといけませんでした。すると…なんと、自分で紙を手にとって、紙コップのところまで持っていき、上に置いたのです。「物を運ぶために手を使う」ということが、初めてできた瞬間でした!
実は、療育の現場の中で、こういった形で子どもが急成長することがあります。スタッフが「ほかの事に手を取られて、すぐに対応できない」=「その子が待たないといけない」という「いつもとは違う状況」が生まれた時。スタッフや親御さんができないだろうと思っていたことを、目の前でやってのける姿に出会うことが、ままあるのです。
私たちは、自戒しないといけません。「手を出しすぎていないか」「手を出すことで、子どもの成長の機会を奪ってはいないか」と。寄りそうことはとても大切です。でも、子どもが何かやろうとしている様子が見て取れたら、一歩引いて待ってみると、思わぬ成長が待っているかもしれません。
A君は先日、今度は初めてチョークで黒板に線を描く姿を見せてくれました。これまではお友達が黒板に絵を描いていても、楽しそうに見ているだけでした。ところが先日は、黒板の前にお友達と3人並び…。絵を描く友達に挟まれた真ん中のA君、うずうずしている様子だったので、チョークを渡してみました。
すると線を引いたのです! そのあとは、黒板消しを渡すと、消すこともできました。黒板消しを初めて使ったので、最初はどちらが消す側かも分からずでしたが、できるようになりました。いろんなお友達と一緒に過ごすことが本人の成長にもたらす影響も、大きいものがあります。cocoroneは、そうした役割としても大切な場所だなと思っています。
■6月まではゆったりと構えて
3月に入り、cocoroneはなんだか落ち着かない日々が続いていました。特別何かがあったわけではないのですが、子どもたちは皆そわそわ。ご飯も十分食べない子が増え…。それが4月も中旬を過ぎると、あらら?きれいにすーっとそわそわの風はどこかへ飛んでいき、普段の様子が戻ってきました。
3月の落ち着かなさは、何だったのでしょう?そう、年度の区切りを迎えることが原因だったのです。日本の教育機関は、4月~3月が1年なので、4月に始まり3月でひと区切りです。「学年がひとつ上がる」「保育園児から小学生になる」「担任の先生はどんな人だろう?」…そんな不安が、子どもたちの行動に現れていたのです。
発達障がい児はよく、「周りの人への関心が薄い」とか「空気を読まない」と言われることがあります。でも実は敏感に、空気を感じ取っているんです。誰の?そう、自分に一番身近なお母さんやお父さんの! 親御さんが不安になったり、落ち着かなかったりしているときは、子どもたちもそれを映す鏡のようになることがあります。だから、年度が始まって親御さんが落ち着くと、本人も安心する、そんな流れが3月~4月ごろは毎年あります。
cocoroneも4月中旬を過ぎて、全体的に落ち着いては来ましたが、まだ新1年生さんたちはかなり頑張っています。しかもこの先にはゴールデンウイークが控えています。4月の間に新生活の形がちょっと整ってきたなと感じても、長期連休を挟むことでまた0に近いところまで戻ってしまうこともしばしばです。
私としては「日常が戻るのは6月ぐらい」と、ゆったり構えていただければなと思っています。cocoroneでは、4月~5月は、いつもより子どもの様子に目を配り、歩調を合わせてあげたいと考えています。緊張も高まっていて疲れやすいので、できるだけ「落ち着く。安心できる」という環境を用意してあげたいです。
子どもたちが普段は言わないようなリクエストも、周りに迷惑でなければ聞いてあげてください。cocoroneでも、「自分の座りたい席に座る」など、子どもたちのささいな希望を聞いています。cocoroneが用意した段ボールをサンドバックのようにたくさんパンチしてから家に帰る子は、家ではスッキリした顔をしているそうですよ。
新しい環境に早く慣れて欲しいと思ってしまいがちな4月、5月。心が不安定になっている子どもたちは、普段できていたことができなくなったりもするので、さらに焦ってしまいがちです。でもそれは一時的なもの。落ち着けばまた出来るようになります。できるだけゆったりと構えて、気持ちよい季節を一緒に楽しみましょう。